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Blog日記

四十九日鎮魂行脚2

海辺に出、平らな所をみつけ、海に向かって横二列になり、四十九日供養のお経をあげました。平らな所はどこかの家の土台で、目の前にタイルばりのお風呂が見えます。海を見ながらお風呂に入るように設計したのでしょう。そして何度も何度も何度もお風呂に入りながら海をみて、海の前で暮らすしあわせを味わったことでしょう。前に並んだお坊さんが持つ「鎮魂」と書かれた旗が舟の帆のようにふくらんでいます。同行取材しているマスコミが前から斜めからカメラを回しています。お経の最後には回向(えこう)といって亡き人に手向ける言葉を文語体で付け加えます。訳せばこうです「本日四十九日にあたり、このお経を東日本大震災で亡くなった水難者にささげます。願わくはその霊安らかならん」。お経の後、牧師さんが賛美歌をささげました。宗教の違いを越えて弔う。その姿が清く美しいのなら、そしてそれをどこかで霊が見ているなら、いくらかは霊にこころ安らかになっていただけたかもしれません。

また縦一列になり、「なむからたんのーとらやーやー」と唱えながら南三陸町の中心部に向かって歩き出しました。中心部に入るには小高い丘をひとつ越えなくてはなりません。坂を登っていくと突然、壊れない家が姿を現します。そのコントラストは“不思議”としかいいようがなく、たとえば45号線のアップダウンを走りながら、普通に建っている家並みと地獄の光景を何度かくり返し目にしているうちに、人は腰が砕けてしまうほどのダメージを受けてしまうかもしれません。

ホテル観洋が見えてきました。志津川湾を一望できる坂の上に建っています。私も地区青年会の研修かなにかで泊まったことがあります。扇型にひろがる志津川湾をながめながら露天風呂に入ったっけ。私は、当時サーフショップがスポンサーの番組を担当していて、店長からこう言われたことがあります。「ビッグウェイブは台風一過の後にやってきて、サーファーは仙台で波乗りした後、波を追いかけて志津川湾に入る。志津川湾の波は形がきれいで大きくて、透明で、日本一だ」。(店長はああ言ってたけど、池のように平じゃん)…そう思いながら露天風呂に入った記憶があります。ホテル観洋の玄関前まで歩いてくると、ホテルに避難している人でしょうか、何人かが行脚の列に向かってカメラのシャッターを押しています。

坂を下っていくとまた地獄の光景が目に入ってきました。ビニールハウスが倒され、収穫されないホウレン草が窮屈さを逃れるために上へ上へと伸びています。あと一週間もすると黄色い花が一斉に咲くことでしょう。その花を見る人は、心に複雑な感情を宿しつつも美しいと思うでしょうか。この地震で、人の美を感じとる装置が傷んでいないことを祈るばかりです。

気仙沼線の高架橋をくぐり、左にカーブすると道はいよいよ南三陸町の中心部へと入っていきます。テレビや雑誌の震災特集で見ていた光景が実際に目の前に広がってきました。瓦礫を燃やしているのでしょうか。4階まで水に浸かった海辺のマンションの向こうに煙があがっています。その煙が戦争で廃墟と化した市街地の残煙のように見えます。崩落した防波堤は爆撃によるものとしか思えないほどの崩れようです。でもこれは戦争ではない。人と津波は闘ってはいない。人が諍いの種を蒔き、自然が攻撃したのではない。だから天罰ではない。

戸倉地区の海辺でしたときと同じように、平らな所をみつけ、横二列に並び、海に向かってお経をあげました。行脚はここで終わり。ここからさらに中心部に入っていっては片付けの邪魔になります。

マスコミの取材が始まりました。牧師さんも話しを聞かれています。「どんなことを思いながら賛美歌をうたったのですか?」「いろいろなことを思いながらうたいました。亡くなられたかたの無念。行方不明者のこと。そのご家族のこと…」。随分流暢です。私は、最初から言葉にならなかった。朝、突然目のまえに現れた瓦礫を見たとき、ただ泣けた。あとは思考できなかった。だから頭をからにしてただ大悲心陀羅尼をあげた。陀羅尼はインドのサンスクリット語を漢字で音写したものだから、般若心経のように和訳できない。「なむからたんのー」という音に霊力が宿る祈祷のお経なのだ。お坊さんみんなで同音に「なむからたんのー」と唱え、亡くなったかたがたの霊を音の真綿で包んであげる感じです。

この世とあの世の間にある四十九日間が、ゆく人とおくる人のおなごりを惜しむために、未練を断ち切るためにあるのなら今回は、四十九日間ではとてもたりないような気がします。私は、百ヵ日にも一周忌にも鎮魂の儀に関わっていきたいと思っています。

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